伝統ある有田焼産業の持続可能性を目指して
有田焼卸団地協同組合は、有田焼産業において販売を担う商社組合として、焼きもの産地の持続可能性を考え、さまざまな取り組みを行っています。
社会状況やライフスタイルが大きく変化し、年々売り上げの減少が懸念される陶磁器産業ですが、その歴史に目を向け、見方を変えれば、400年もの長きに渡り焼きものを作り続けてきたこと自体、持続可能性、まさに SDGsに取り組んできたとも言えるでしょう。
しかしながら近年、「後継者・人材不足」「原材料の確保」などの課題が顕著となり、さまざまな物価や経費が高騰する状況において、今何ができ、何をすべきなのか?400年の歴史に甘んじることなく日々新しいことへ挑戦しながら、有田焼産業を次代に繋いでいかなくてはなりません。
わたしたちは、焼きものを地場産業とする持続可能な町をつくり、器文化を継承・発展させていくため、窯業関係者はもちろん、それを支えてくださる町民の皆さま、さらに使い手であるお客さまと連携しながら、SDGsに取り組んでまいります。
SDGs宣言
「ひと」と「まち」が繋がり、
持続可能な陶磁器文化の発展に向けて
- 日本初の磁器を製造・販売してきた、400年におよぶ《伝統》ある有田焼産業の継承に努めます。
- 現代のライフスタイルに寄り添い、器文化の発信を通じ、新たな価値の創出を目指す《進化》したものづくりに挑戦します。
- 地球環境の持続可能性をを考え、CO2排出や産業廃棄物軽減に取り組む《循環》型産業へ貢献します。
- 有田町や観光協会、商工会議所や他組合と連携し、年間を通じたイベントの共催や町の活性化事業への協力、西有田の農業などの異業種と窯業が《協働》できるさまざまな取り組みを推進します。
- 有田町の観光拠点として年中無休で旅行客をお迎えするとともに、「食」などを通じて地域住民も楽しめる、地域の誇りである有田焼の魅力を伝える《多様》なおもてなしに取り組みます。
SDGsへの取り組み-1
焼きものへの感謝や、ものを大切にする心を伝える
茶わん供養
アリタセラのシンボルとして南館に常設展示している「茶わん神輿」は、焼きものの神様として親しまれる「陶山神社」の分霊が座す御神体です。
アリタセラでは、焼きものへの一年の感謝の気持ちを込め、毎年11月に開催している「有田のちゃわん祭り」にて、陶山神社宮司による「茶わん供養神事」を執り行っています。令和4(2022)年度の開催で、40回を数える歴史ある神事です。
欠けてしまったり、割れてしまった茶わん、役目を終えたご愛用の茶わんをご持参いただき、茶わんの形をした「茶わん絵馬」に御霊を移し、感謝の気持ちを書き添え、「絵馬掛け処」にご奉納いただけます。
有田のちゃわん祭り期間中はもとより、御神体「茶わん神輿」の傍では、一年を通して皆さまからの「茶わん供養奉納」を承っております。
陶山神社の分霊が座す茶わん神輿にて執り行われる「茶わん供養神事」
絵馬掛け処に奉納された「茶わん絵馬」
陶山神社宮司による茶わん供養神事の様子
茶わん絵馬 お焚き上げ神事
「お焚き上げ」とは、御霊を移した絵馬など魂の宿ったものを浄火で焚き上げ、祓い清める儀式です。
役目を終えた愛用の茶わんへの感謝の気持ちを書き記し、多くの皆さまからご奉納いただいた「茶わん絵馬」。
日々に豊かさを与えてくれた器との別れを惜しみ、供養することは、「厄災消除」の身代わり祈願となり、さらには代々に渡り食べることに困らない「子孫繁栄」にご利益があるとされます。
毎年2月、有田焼卸団地協同組合では、陶山神社宮司による「茶わん絵馬 お焚き上げ神事」を執り行い、過去1年間にご奉納いただいた「茶わん絵馬」を責任を持って丁寧に供養していただいています。
有田焼卸団地協同組合の組合員が参列して執り行われる「お焚き上げ神事」の様子
茶わん絵馬
茶わん絵馬のお焚き上げ
べんじゃらプロジェクト
「茶わん供養」の一環として、令和3(2021)年春より、供養後の茶わん等の器をチップ状に粉砕加工し、植栽足元の敷材として再利用する「べんじゃらプロジェクト」を始めました。
有田焼の商社が集まるアリタセラとして、販売後の陶磁器の行く末を見据え、さらに愛着を持って長年使っていただいたお客様の器への想いに応え、そして焼きものへの感謝や大切にする心を醸成していこうという「茶わん供養」を発展させたSDGsへの取り組みです。
これまで供養した後の茶わんは廃棄処分しておりましたが、その有効活用を考え、細かく砕いてチップ状の「べんじゃら(陶磁器片を意味する有田の方言)」に加工し、アリタセラの中央大通りの植栽足元のグランドカバー材として敷き詰めることで、有田焼産地らしい景観材料に生まれ変わります。
さらに今後は建材としての利用も考え、産地の産業廃棄物のアップサイクルの取り組みとしても検討を行っています。
アリタセラの植栽足元のグランドカバー材として敷き詰められた「べんじゃら」
ハンマークラッシャーで茶わんなどを粉砕し、べんじゃらに加工
べんじゃらを化粧石として再利用
SDGsへの取り組み-2
脱炭素社会に向けたクリーンエネルギーへの転換
太陽光発電所の整備・運営
有田焼卸団地開設40周年の記念事業として、組合員有志16社が出資し、参加事業所の屋根にソーラーパネルを設置。総出力408kw(総面積 約3,130㎡:テニスコート約12面分)の太陽光発電設備を平成27(2015)年9月より稼働しました。
直近5年間の発電量の年平均値は、49万2,700kWhに達し、日本の一般家庭の年間電気使用量換算で、約約114戸分の電力を生み出しています。
陶磁器の生産において、焼成という工程は欠かせません。有田焼はその焼成にガス窯を用いており、多くのCO2を輩出しています。アリタセラでは、脱炭素社会の達成に向け、産地内の化石エネルギー需要軽減に努めています。
事業所の屋根に設置されたソーラーパネル
SDGsへの取り組み-3
食と連携した器文化の発信
クリエイティブプラットフォームを目指して
arita huisの運営
「外部のクリエイターや観光などで有田に来訪される方々との交流の場を設けたい。」そんな想いをきっかけに、佐賀県のクリエイティブプラットフォーム交流・発信拠点整備事業として、2018年4月18日、アリタセラ内にホテル・レストラン「arita huis(アリタハウス)」を開業しました。
10組のお客さまを迎えるスタイリッシュなホテル、臨場感あふれるオープンキッチンと36席の落ち着いたダイニング、海外のクリエイターがアリタに長期滞在して創作した作品を展示するギャラリーを併設したレストラン。有田でしか味わえない特別なひとときを、充実したおもてなし、食、空間美でお迎えしています。
有田焼の奥深さ、歴史、洗練された世界観を表現する他には類を見ない心地よい空間として、日本ならではの美しい器を体感し、愛で、味わえる、唯一無二の場所を目指し、食と連携した器文化の発信に努めています。
開放的なオープンキッチンとダイニング
クリエイターの作品を展示するギャラリー
「SDGs」とは
2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択された「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)の頭文字をとった略称です。
国連に加盟する193ヶ国が、2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた国際社会共通の目標のことで、17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲット(達成基準)で構成されています。
これからの国際社会での共通の価値観として、豊かさを追求しながらも地球環境を守り、人類存続のため、「経済・社会・環境」という3つの側面においてバランスがとれた、優しさ、気遣いのある行動を実践していこうという取り組みです。
有田焼卸団地協同組合が目指すSDGsへの取り組みはアリタセラタイムズ特別号でもご覧いただけます。